美術品をどう見せたら素敵かなあ?
— 2020年11月12日 画商ですから、全国各地どこの美術館でどのような展覧会が開催されているのか、いつもアンテナを張り巡らしているのですが、訪れた美術館の建物に、まず目をうばわれ、そして中にはいれば、展示されている名品に感動することがままあります。
先日、「京都市京セラ美術館」を訪れました。
夕暮れ時だったのですが、平安神宮の赤い大きな鳥居と並ぶようにして、日本風の瓦屋根のあるとてもモダンな建物が建っています。「何なのかしら?」という第一印象なのですが、不思議ととても魅力的です。「帝冠様式」と呼ばれる、鉄筋コンクリートの建物に和風屋根をかけた日本趣味の建物なんだそうです。
昭和8年(1933年)に、日本で2番目の公立美術館として開館した京都市美術館を、令和2年(2020年)に建築家の青木淳がリニューアル・オープンしたのですが、帝冠様式の重厚な本館の雰囲気を残しつつ、ガラスが多用された、現代風の美術館です。赤い鳥居とマッチしていて、素敵です。
私が訪れた時は、写真家杉本博司の個展「瑠璃の浄土」が開催されていたのですが、広いホールに高い天井があり、そこを抜けると薄暗い部屋の中には、たくさんの仏様の写真がありました。
お隣の部屋では、プリズムを透過した偏向色をポラロイド撮影した赤や黄や青の色鮮やかな作品が多数展示してあり、すごく工夫された展示でした。
展示室の裏から出ると、庭があって、杉本の設計したガラスの茶室がありましたが、これもまた「本当に茶室なの?」という不思議な造りでした。
リニューアルした後に館長になった青木淳は、「京都という街は、素晴らしい生活文化を持っているところ。古くはお茶であったり、現代ではアニメーションであったり、いろんな生きてるものがある。そういうものを分け隔てなく扱っていくという意味で、美術館を「開かれた美術館」としてとらえ直したほうがいいだろうと思ったんです。美術館の展示室だけが重要というのではなく、美術館という与えられた空間全体にうまく「気」が回ること。そしてそれが外とつながることがすごく重要。もともとあったものを否定するんじゃなくて、あったものに新しいものが重なるようにつくっていくことができないかなと、努めて優しい方法のリノベーションを目指しました。」と話しています。
私も、「そうだなあ」、「もともとあったものを否定するんじゃなくて、あったものに新しいものが重なるようにつくっていくこと」ができたらいいなと感じます。
そして東京にも、そんな美術館があります。
東京丸ノ内には超高層ビルが林立しているのですが、その足元に、3階建てのいかにも明治時代を偲ばせるような赤煉瓦造の「三菱一号館美術館」があります。同館の「ヒストリー」によれば、「三菱一号館」は、「1894(明治27)年、開国間もない日本政府が招聘した英国人建築家ジョサイア・コンドルによって設計された、三菱が東京・丸の内に建設した初めての洋風事務所建築です。全館に19世紀後半の英国で流行したクイーン・アン様式が、40年あまりの時を経て、コンドルの原設計に則って同じ地によみがえりました。」とのことです。
赤煉瓦が本当に印象的で、おしゃれな中庭もあり、美味しいお菓子でも食べながら、周りの喧噪を忘れて、ゆっくりとした一時を過ごしたいなあと感じる場所です
この美術館では、「ルドン・ローレック展」が開催されていたのですが、ルドンやロートレックだけでなく、ゴーギャン、ルノアール、モネ、ドガ、ミレー、シスレーなどの作品も多数展示されていて、しかもそれが名品ぞろいでした。「これほどの名品を展示できるなんて、すごいなあ」と、素直に感動しました。
ロートレックの作品を一度にこれほど沢山見る機会が初めてだったのですが、作品からロートレックが活躍していた19世紀末の急速な近代化の中での、上流階級と下層大衆層の人々の生活がかいま見れ、今見てもとてもモダンで古くささを感じさせないところが素晴らしかったです。
しかも展示のしかたが、古い建物の雰囲気を残しながら、高い天井に、十分なスペースをとっての展示で、そこがまた良かったです。特にロートレックの作品展示スペースは、壁が赤色で施されていておしゃれで、作品によって壁紙を変えて見せることなどで、当時のパリの雰囲気・世相を感じさせる演出が良かったです。
多くの美術館の展覧会の企画にかかわっていらっしゃる経験豊富なキュレーターの方のお話しでは、「美術館それぞれの空間と、作品の配列の響きあいは、企画にとってきわめて重要です。キュレーターは企画に関するすべてのことに心を砕く責務があります。」とのことでした。
私の画廊は銀座にあるのですが、多くの方がお見えになります。私も、「美術品をどう見せたら素敵かなあ」と、いつも「画廊の空間と作品の響きあい」に心を砕かなくっちゃと改めて感じさせてくれる展覧会でした。
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