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天才パヴァロッティを聴きました 誰も寝てはならぬ!

 今、渋谷のBunkamura ル・シネマでは、『パヴァロッティ 太陽のテノール』が上映されているのですが、何と素晴らしい。ルチアーノ・パヴァロッティ(1935~2007年)は、「神の声を持つイタリアの国宝」とか、「世界一有名なオペラ歌手」と言われているのですが、私は、観に行ったというか、聴きに行きました。

パヴァロッティ

 「テノール」とは高い声域の男声歌手やその声域のことなのですが、パヴァロッティの他の歌手とは格段に際だった高音(とくに「ハイC」と呼ばれる高音が素晴らしく、「キング・オブ・ハイC」の異名まであったようです)にうっとりと聴き入ってしまいます。

プッチーニ『トゥーランドット』の「誰も寝てはならぬ」や『マノン・レスコー』の「見たこともない美人」とか、『トスカ』の「星は光りぬ」とか、これまで何度も何度も聴いているのですが、映画館の大画面で、パヴァロッティの大きな体格と、とても明るい笑顔と、そして音楽だけではない、恵まれない子供たちへの支援活動などその人生に触れると、またひと味違い「感動」します。

「天から授けられた才能」って本当にあるんだなあとつくづく感じます。

私は、パブロ・ピカソ(1881~1973年)の絵にも、同じような感じを受けます。ピカソは孤独で不安な感じの「青の時代」から、明るい色調の「薔薇の時代」、キュビズム、新古典主義などなど画風は劇的変わり、ナチス・ドイツがスペインのゲルニカを爆撃したことを非難する大作『ゲルニカ』などの作品で誰もが知っている画家ですが、何人も素晴らしい画家がいるなかでも、際だって輝く「天才」です。

ピカソ作品

 イタリア人のパヴァロッティとスペイン人のピカソ。お二人とも、そろってとても魅力的な男性です。パヴァロッティは34歳も若い奥さんと再婚し、ピカソは42歳も若い女性と恋に落ちています。ふう。
 話は変わりますが、パヴァロッティは様々なジャンルの音楽家と共演しています。とくにアイルランドのロック・バンドU2(ユートゥー)のリードボーカルのボノとは親交があったようです。

 さすがのパヴァロッティも晩年は「ハイC」と呼ばれる高音を出すことが難しくなり、聴衆から、パヴァロッティの「声」だけで才能が枯れたみたいな言われ方をする場面がありました。でもボノは、「アーティストは単に『声』だけでなく、その人生で評価されるべきだ」みたいな言い方で、パヴァロッティを擁護していました。

 私はその場面を見ていて、画商を初めた頃に、医者で美術品の愛好家でもあった父から言われた言葉を思い出しました。「画商の仕事というのはね、単に絵画を売るだけのことであってはならないと私は思う。絵画と一緒に画商自身を、つまり自分が備えている知識だとか信頼感、そして審美眼というか・・画商であるおまえ自身を買ってもらうことなんだよ。」って。

 パヴァロッティは、もちろん「声」が「天才」なのですが、それだけでなく、パヴァロッティという人そのものの「素晴らしさ」が評価されるべきなんだなあと思い、おそれ多くも、私も「単に絵を売るだけでなく」、私自身を「買ってもらえる」ように磨かなくっちゃいけないんだろうなあと思ったのでした(できるかなあ)。

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